『アッシュベイビー』 金谷ひとみ

 『アッシュベイビィ』金谷ひとみの第二作だが、前作の『蛇にピアス』ほどの中身はなかったと思った。
 描かれている内容の過激さは前作に劣らないと思えるのだが、結局この作品でも作者は人と人との関係の取り方が書きたいのだと思うが、結末に至るまでを、この問題を前作ほどそれほど突き詰めて考えられているとは思えない。 人との関係が崩壊して、関係の取り方が掴めない、その新しさというか、過激さというか、そんな関係のままがそのままむき出しに提示されていると思うが、煮詰めるのを中途で止めて、放り投げたようなところがある。 まあ、まだ、まだ先はある、このテーマに喰らい憑いてまだまだ掘り下げていって欲しいと思う。

 最近奈良県で起きた小学一年生の幼児誘拐殺人事件で、幼児の身体から唾液が検出された、と報道にあるが、今の時点でそのようなことをわざわざ発表することに何か嫌なものを感じる。
 そのような瑣末な事実の発表で犯人逮捕の何かの手がかりにとか、手助けにでもなるのだろうか?
 今の時点でこのような瑣末な発表は犯人が愉快犯的な性格の持ち主なら、犯人をますます愉悦さすだけだろうし、一部のマスメディアは犯人は極悪非道な人間だぞ、これを見ろとばかりに書き立てるだろう。 これまでも少女がいったん裸にされその後衣服を着せられたとか、身体に傷があるとか、歯を抜かれていた、体毛が付着していたというような微細な事実を捜査本部はこれでもかこれでもかと言わんばかりに次々に発表している。
 たしかに情報は極力開示せねばならない、しかし、時と場合というものがあるだろう。以上のようなことを今の時点で次々に発表したとしても、それによって一般的な国民はそのような瑣末な事実を詳しく知ることの何らかのメリットがあるのだろうか。 もう少しこの場合、被害者の側、遺族の側の心痛との兼ね合いを考えても良いと思うのだが・・・。