アレン監督に似た友人

 昨日の雪は一日限りで、今日は曇り時々晴れの天気。

 先日ホームセンターへ買い物に出かけてレジに並んでいる時、高校時代の友人が横を通った。
 「よお!」と声を掛けると怪訝な顔をしてこちらを見て、「誰だっけ?」と聞いて来る。
 「何言っているんだ、俺だよ、**だよ」とこちらの名前を名乗ると「ああ、そうだった、分らなかった」と言う。 ほんとに分らなかったのかなぁ?とも思いその顔を見ながら相変わらず髭剃り後が濃いなぁとおかしなことを思う。 まあそんなことはどうでもよいが、じつは彼と逢うのは十年ぶりぐらいである。 やはり十年ほど前にも役場の前で、いきなり十年ぶりぐらいに逢ったことがあった。
 この米*君は少しおかしなヤツなのである。 今は眼鏡を掛けていないが以前は黒ブチの眼鏡を掛けていて、眼鏡を掛ける掛けないにかかわらず、あの映画監督で俳優のウッディ・アレンの印象にどこか似たところがある。 顔のどこが似ているというわけではないが、あのなよなよした青白いインテリ臭さが滲み出ていて、どこか自信がなく、不安そうなアレン監督と雰囲気が似ているのである。 そうそう少し頭頂部が禿げているところもだが・・・
 その彼が唐突に「君の**という名前は水に関係しているから、女にモテルのだよね」と言い出した。 そんな話は十年ぶりに顔を見た相手に、いきなり言い出す話題では決してないと思うのだが・・・ 
 しかし、こちらも彼のことは少し知っているので、「そうか、そうか、うれしいことを言ってくれるなぁ」と笑いながら受ける。 するとまた 「水に関係する名前は女と関係する。女とつながりがあって、女にモテルンダヨネ」と同じことを繰返す。 「それじゃあ君の**という田圃に関する名前はどうなんだ?」と聞き返すと 「ダメ、ダメ、田圃はまったくダメだよ、田圃はモテナイ」と愛想のない答えが帰ってくる。 
 もう一度「水に関係ある名前は、女にモテルんだよねぇ」と繰り返したと思うと、急に今度は「この辺の人はダメだ、家にばかりお金を掛けて豪華にして・・・」などと関係ないところへ話が急に飛ぶ。 レジを打っていた女の子も呆れたような目で遠慮なく彼のことを見ているが、そんなことはとんとお構いなしで、ひとりでペラペラしゃべっているのである。
 そういえば十年前に役場の前で逢った時も、顔を合わすやいきなり 「韓国は怖い所だよ。韓国へ行く時は気をつけなよ・・・」という話題だった。 聞いているうちに、どうやらその少し前に村の中年の連中何人かと韓国へ旅行したらしいが、韓国の夜にたまたま行った何か怪しいバーかそんなところで、たいして飲みもしないのに多額の勘定を吹っかけられてボッタクられ、金を巻き上げられたたと言う話なのだ、ということが分ってきた。 しかし、そんな話題も十年ぶりに会った相手にいきなり話すような話題ではないと思うのだが・・・
 彼はオフがレジを済ませ、店の外へ出て止めてある車の所までもおしゃべりしながらながら附いてくる、「ごめんよ、今日は少し急いでいるので・・・」というと、「あっ、そう」とうい感じでいきなり話をやめて、店の中へスタスタと引き返していく姿がサイドミラーに映っていた。
 彼とは次にまた十年後ぐらいに街のどこかで突然逢うだろうか?
 この次逢った時、彼がいったいどんな話題を切り出してくるのか予想もつかない。