「彼女の恋からわかること」

初夏というには少し早いような、さりとて春の花は一回りしてすでに終わっている。 何とも言いようがないが、とにかく爽やかな季節である。 一昨日行った高落場山ではトチの木やホウの木など大木の白い花や谷ウツギのピンクの花が咲いていたし、ホトトギスやウグイスの鳴き声も冴え渡っていた。 それよ
りもなによりもブナの軟らかい新芽の林の中のすがすがしさは、なにものにも変えがたいものがあった。 畑ではほんの少しトマトの苗が伸びた。 化学肥料を使っていないので、野菜の苗の最初の伸びが遅い。 しかし後々になって有機肥料は効いてくるので、遅くまで収穫が出来る。 年によっては11月にトマトやナスが実ることもある。 午後から山の家へ出かけて、冬の雪で外れていた玄関上の雨樋をつけ直す。 ついでに雨戸を外し当地方でボウズザマ(坊主座間?)とおかしな呼称で呼ばれている格子
戸を入れる。

 この間神戸で読んだ本や映画を話題に取り上げてきたが、どうやら今回の「彼女の恋からわかること」この映画で溜まっていた話題は尽きる。 この映画は新作ビデオで見た。
 十人の女性へのインタビュー集 (実際は役者が語っているであるが) 彼女達は自宅でくつろいでカメラに向かってデートや初体験や恋愛観、これまでの男性体験や遍歴などを語っている。
 この映画は「彼女を見ればわかること」で2000年カンヌ映画祭ある視点部門グラン
プリに輝いた ロドリゴ・ガルシア監督が10のエピソードを綴った第二作目である。 なにせ各エピソードの登場人物は、女性一人だけ、各女優はわずかな身振り手振りと言葉、表情だけで、ただカメラに向かって切々と自分の恋愛体験を、それぞれのストーリーにして語っていく。 十人もの女性が四方山な話を次々に語るので、残念ながら後になると個々の話の印象は極めて薄くなってしまう。 企画としては面白いと思うのだが・・・やはり喋りだけではインパクトや印象は弱い。 これにせめて場面
場面の映像が絡んでいれば、もっと面白いものになった、と思うのだが・・・

 その中にところどころ印象深いセリフがあった。
 それはある匂いが昔関係した男性と結びついていて、そのある匂いをかぐと昔の彼の事が思い出される、というエピソードとかーーー離婚も乗り越えるたわ・・・でも立ち直れたとしても、元には戻れないものよ、という感傷的なセリフとかーーーアーティチョークの茹で加減という些細なことからいさかいが始まって、浮気に走って家を出るしかなかったのョ…オイ、オイ、オイと言いたくなるようなセリフだったりーーー離婚した夫からの最後のプレゼントの犬を癌で亡くしたが、その哀しみを分け合うために、話をしたのは現在の恋人ではなく、別の家庭を作っている元の男だった。 その昔の彼とホテルでコトを済ました後、現在の状況から今の恋人が救ってくれることを願っているゎなどという、身勝手な女の訳のわからない気持とかーーー
 女性の体験と男性のそれでは根本的な違いがあるなぁ、というありふれた感想を抱いたものだが、もちろんそれは古今東西少しも変わりなく相も変わらず昔から続いていることである。 
 嘘をついてもヤリタイ!だけの男性の不実さを、女性が感情的に非難している話を聞いていて、多分相手の男性の本音のところの言い分は、その場では語られていないが、代弁すると、お前も良い思いをしたのだから、それで良いじゃないか、と言うことに尽きるのだろうと思ったりして・・・、 まさに、あ〜あ、それにしてもやれやれな話でる。