『グロテスク』

暑い、暑い。日本海を低気圧が発達しながら進んだので、南から風が吹きこ
フェーン現象で昨日も今日も気温が29度まで上がった。
 そんな中何となく一日を過ごしていた。身体を動かしてしたことといえば、
この暑さで生ゴミの容器が臭くなったので、捨てに行ったついでに野菜の苗の
状態を見た。
 マロ君と散歩に出た。買い物にスーパーへ出かけたぐらいである。

 桐野夏生の『グロテスク』を読む。
 彼女の作品は結構話題になるので「柔らかな頬」と「OUT」を読みはじめた
が、たしかどちらも途中で放棄した。彼女の作品は通俗小説としてはマシな作
品だと思うが・・・オフにはどうも読んでいて面白くない。 今回の作品も途中
で何度か放棄しようと思ったが、今回はなんとか読み切った。 まあ、読み
切って、だからどうだった、だがそれで終わり、自分で自分にごくろうさん、
といってみる程度のことだ。

 数年前、東電OL殺人事件、というのがあって、うわぁ一流企業に勤めるO
Lが街に立って売春!と世間は騒いだが、その事件にヒントを得て書かれた作
品である。
 しかし、キャリアのOLが街娼だった! うわっ〜なんで?なぜ? その事
件の謎を解く、ということを期待して読んだら、それは大間違いである。

 作者はむしろその事件に、エリート女性の堕落と捉え、異様なほど興味を煽
りたてたマスコミや世間の人々のほうに興味を持ってこの作品を書いたと思え
る。

 現代の女性が内面に持っている目に見えない抑圧と差別が過剰に集約して、
こんなオンナはいるわけないわ、といえる異様でグロテスクなモンスターとし
ての主人公達を作り上げた。
 もし女に、だれかに求められて初めて自分が成立するという側面があるな
ら、セックスをする一瞬だけ自分がかけがえのない存在になりえる、という作
者の問いとも答えともつかぬ囁きが聞こえてくる。

 男達や世間の女達も誰も彼女達を理解できていなかった。通俗的な安っぽい
ストーリィでしか理解できなかった。
 〈誰か声をかけて。あたしを誘って〉〈綺麗だって言って、可愛いって言っ
て〉〈あたしは、勝ちたい、勝ちたい、一番になりたいの〉なんとも悲惨な叫
びがこだまする。