中古住宅

 出かける前にキュウリを一個ハシリのものを収穫して食べたが、これはみずみずしくて美味しかった。 約一週間家を空け、心配していたが雨が多かったせいか野菜はナスもキュウリは実を付けていなかった。 トマトはワキ芽を大きく伸ばしていたが、さっそく摘み取る。 そのトマトやキュウリは幾つか小さな青い実を付けているので、もう少しすれば収穫出来るだろう。
 
 マロ君を連れて山の家へ行く。 昨年数ヶ月マロ君は山の家で過ごしたので、最初は落ち着かない様子だったが、すぐに長々と寝そべっている。 その寝そべったマロ君の上をツバメが頻繁にかすめて飛んでいる。 土間のツバメの巣では子ツバメがかなり大きくなり、体の一部が巣の外にはみ出している。 多分4,5羽いるのだろうが親鳥が餌を運んでくるたびに、早くくれと言わんばかりにチチチ・・・と競いながら鳴いている。 これらの雛も巣立つ日はそう遠くないようだ。
 山は涼しい、多分夜はまだ少し肌寒いくらいだろう。 午前中障子戸を簾戸に入れ替える。 こうしておけば風が通るし、7月になると出てくるアブ対策にもなる。

  先回須磨へ行った時、部屋にあった不動産会社の宣伝チラシを何気なく見ていて、その中の一軒の中古住宅に目が留まった。 建物としてはかなり古く、68年ごろに建てられたRC造りの個人住宅だが、その間取りを見ると、何と言うか、当時造り手がこだわりにこだわって造られているように見えた。  
 その後何度か建てましているいるだろうことも図面を見ていても分るのだが・・・。 たしかにこだわって造られている家だが、どう見ても住みにくそうな家なのだ。 最初はその住みにくさが何となく気になって、図面を見ながら、こことここをこういじればもっと住み易い間取りになるんだがなぁ、などと思ったりしていた。 表示されている場所は隣の垂水区で、彼女に聞けば車で十分ぐらい走れば行くところにある家であり、しかもその物件を扱っている不動産会社は、陽子さんが以前付き合っていた男友達が働いている会社である。
 物好きにも陽子さんにお願いして彼に電話を入れてもらい、その住宅についての情報を探った。 どうやら高校の美術の教師が持ち主で、現在住んでいる。 その高校教師はビンテージ・バイクの収集家であり、そのバイクの置き場に困って、引越しを計画しているとのことだった。 また家は相当オンボロで仲介物件としては土地代金のみの評価の値段らしい。 たしかに家付きの中古住宅としては他の物件などと較べると安い。 どうしてもその家を一度外からでも良いから見てみたくて、彼女を誘って車で探しに出た。 小学校のグランドの横の道路に面して立っている建物で、分譲地の中に建っている一軒であり、周りは同じような大きさの土地の家がずらりと建っていた。 
 オフとしては、その家が欲しいのではなく、ただ自分でこだわりの家を改造して再生してみたかっただけなのだが、ひそかな片思いはその家を見た時点で萎んでいった。

 そして今回須磨へいって、その外の中古住宅の物件の資料も、例の彼から送られてきているのを知った。 さっそくそれらの資料を丹念に調べていく内に、座敷が田の字型になったいかにも田舎風な平屋建ての建物が一軒あった。 敷地の坪数が150坪以上あり、何と住宅付きのその物件の値段が二千万を切っていた。 坪当たりの単価が十万円チョイで都会周辺にしては信じられない値段である。
 しかも場所は先日見にいった住宅とそんなに離れていない。 ただし条件がついていて建物を建て直すときには、西側の道に面した部分を1メートル幅で25メートル道路に提供しなければならない条件である。 といっても高々25平米だけである、まだ残りの敷地は140坪を超えている。
 さっそく彼女と見にいく。 見てみて納得だった。 その家へ入るのは狭い道路が一本あるだけで、軽四の車も通れそうもない坂道である。 西側の土地を提供してもその家へ入る道には関係なく、その手前の両側の家が土地を提供しなければ広がらない。 その両側の家は壊すにはもったいない立派な昔の門があるので、いつ道路が広がるか分ったものではない。 建物は平屋建てだが築40年以上経っているが昔の農家である、造り自体はしっかりしているように見えるし、やや古いが蔵や納屋も付いているのである。 さらに建物の中も見たいところであるが、残念ながらここも現在まだ人が住いをしている。 ここの家も使い勝手が悪そうな、おかしな間取りである。 彼女のマンションへ帰ってからもしばらくいろいろその家の図面をにらめっこしていたが、どうも上手いアイデアが出てこない。 廊下というものが無く、部屋から部屋へと移動しなければならない間取りは冠婚葬祭用としては良いが、普段の暮らしには使いづらいものである。 田の字の部屋だが、せめて8畳間があれば間に半間の廊下を取ることも出来るが、四畳半と六畳間ではどうしようもない。