「アメリカン・スプレンダー」

 東京では40度近い気温と報じられている。 こんな時でも首都の営業マンたちはネクタイをキッチリ締めて歩き回っているのだろうか。 当地は時々思い出したように弱い雨が降る涼しい天気。
 ことし二度目の子育てのためツバメが頻繁に玄関の上の欄間を通り抜けて飛来している。
 終日寝転がって本を読んでいたが、途中で飽きて掃除機をかけたり、昨日また収穫してきたナスを漬物にしたりした。

 神戸で二本の映画を観た。その内の一本が「アメリカン・スプレンダー」 いわゆるB級映画である。
 アメリカンスプレンダーと言うのは人気のコラム漫画雑誌の名前であり、その実在の原作者の半生を描いている。
  病院で書類整理係として働くハービーは二人目の妻にも愛想をつかされて出て行かれ、サエない毎日を送っている。 その外見もさることながら不器用この上ない男であるが、そんな彼がある日、自分の日常をコミックにしようと思いつく。 たとえばそれは、スーパーのレジで年寄りのユダヤ人の婆さんの後に並ぶとどんな悲惨なことになるか、を彼が体験した話をコミックにしたようなものであるが・・・  
 絵がかけない彼は友人の男に作画を頼み、コミック誌アメリカン・スプレンダー”を創刊する。 するとこれが予想以上の評判を呼び、やがてハービーはこの作品の熱心なファンの天然ボケ系の女性読者と出会い、おかしい者同士の二人は即オネンネ・・・

 多分このコミックの読者なら、時々ハービーの見せる決めた不器用なポーズや表情がコミックの中のそれとダブって異様なおかしさが沸くのだと思うが・・・残念ながら読者でないのでそうはいかなかった。
 まあメジャーなハリウッドでは、たとえコメディであろうとも取り上げないような、真面目なだけに不器用さだけが際だってしまう人たち。 たとえアンチであろうとヒーローに縁のない下層の人たち。 それだけにドリームに対しては毒のある人間像を表に出てしまう人たち。 このような人物像を取り上げるインディーズ系映画や、B級コミックがある限りアメリカの健全さはまだまだ捨てたもんではないと思える。ただしストーリィは主人公の半生を時間を追ってたどるだけでなく、もう少しユダヤ人の婆さんの話のような笑えるコミックの内容をフラッシュ風に取り上げても良かったのではないかと思う。
 オフの評価店50点。