暇つぶし

 母親が先の台風で裏の窓の簾が外れて落ちたというので、取り付けに行った。
 畑の見るとまたナスビやトマト、ナンバがスーパーの袋いっぱいに採れる。 ナスビは風にあおられたせいか少し皮が擦れて茶色く変色し硬くなっている。
 早稲の稲はもうすっかり黄金色に色づいて垂れている、今週末あたりから刈り取りが始まるだろう。
 先日から洗濯機が壊れて動かない。 この洗濯機はたしか昭和の頃からあった物でそろそろ寿命なんだろう。 電気製品の量販店を覗くが安いもので二万円弱から、上は十数万円するものまである。
 引き取り料金が掛かりさらに四千円ほど上乗せとなるとのことだ。 久しぶりにビデオ店を覗くと大幅に作品が入れ替えになっていたので、5本ばかり借りてくる。
 されに足を伸ばし怪しいビデオ激安王という店へ、先日見つけた「ブルックリン最終出口」「ストレンジャー・ザン・パラダイス」を買いに行く。 ところが狭い店内にラース・フォン・トーリアの「イディオッツ」やハルストレイムの「マイライフ・アズ・ア・ドック」 さらにアンゲロプロスの「旅芸人の記録」 そして、そしてついに見つけた!デビット・リンチの「ツインピークス」全8巻。 安いのをいいことに全部買ってくる。 まだまだじっくり探せば垂涎の作品がありそうだ。 なにせここの店のウリはAVのエロビデオなので、一般作品は隅っこの狭い通路で探すしかないのだ。
 

 はてなおとなり日記の中から見つけた ひとり洗脳プログラム、http://d.hatena.ne.jp/TIGER1/という日記を書いているTIGER1名乗る大学生と思われる人が以下のように書いていた。

 ≪粘土工作を始めたんですね。今回は「馬」を作りました。色塗りを終えると「赤兎馬」になります。約7〜8時間かけて作りましたが、出来栄えはあまり良くありません。というより、失敗作です。まぁ150円で7,8時間も暇つぶしができたので結果オーライ…人生は暇つぶしですからね。金持ちだってゴルフに興じたり、麻雀ブッたり、結局は何かに打ち込むんだしね。仕事だって同じ事だろうよ。みんな臨終までの待ち時間をなにかして潰そうとしてるんだな≫

 と書いている 人生は暇つぶしですからね。 という軽い言い切りにムムム!と驚いた。
 たしかにオフも学生時代にもそれに近い感覚があったことはあったが、それをこのようにあからさまに軽く言い切るのはさすがに少し抵抗があった。 たとえば岸田秀が言うように、人は本能が壊れている生き物で、本能に変えて幻想を代用して生きている、という言い方からすればそれはもっともなのであるが・・・。 いずれ死ぬしかない自我を何かのささえで意義のあるものにするために、人は悪戦苦闘して生きている訳だが、それを、暇つぶし、と正面から言い切る世代がすぐ後から追っかけてくる。

 先日、たまたま紅鮭の産卵の場面を映像を見た。 何千キロと回遊して最後に故郷の川をさかのぼりメスはイクラ排卵し、それに向けてオスが大きく口を開けて全身を震わせて精液を射精していた。 その生々しさに目が画面に釘付けになったものだが、そこが頂点で、その後は誰もが知っている通り紅鮭のオスもメスも干からびたようになって死んでいく。 まさに本能に導かれ遠い旅をして最後は子孫を残すための行為をなして、死んでいく訳だ。
 しかし、もし、俺そんな生き方嫌だぁ、いち抜けた、という本能に逆らう行動にでる紅鮭がいたとしたら、その紅鮭も海をフラフラと泳ぎながら、いずれ言うかも知れない、人生は暇つぶしですからね、と。