おわら前夜祭

 風がそよともなく蒸し暑い天気だった。 
 夕方頃に知った人達が来て、連れ立って夜おわらの前夜祭に出かけた。
 前夜祭は11ある町内の内のひとつの町内が一日ずつ受け持って、8月20日から30日までの11日間行われている。 今日は東町が受け持ちの日だった。 8時から10時まで東町地内で輪踊りと、町流しが行われ、これは本番前の予行演習的を兼ねている。 ただ前夜祭といえど日曜日のせいか、あまりにも見物客が多すぎる。 背の低い人など人の頭を見にきたもんだわ、と自嘲気味に笑っていたりして、当事者でないがどこか気の毒である。 町流しの男衆と女衆が別々の踊りをするいわゆる見せる踊りは迫力があって、もっともっと見ていたかったが、踊る時間があまりにも短い。
  残念ながら去年の三日目の真夜中に見たあの感動を追体験することはかなわなかった。 やはりおわらは三日目の夜の十二時過ぎ、観光客が減って静かになった町の辻々に、薄ボンヤリ光るぼんぼりだけが灯った薄明かりの中で、どこからともなく三味線の音、胡弓の音とおわらを唄うかん高い地声が聴こえてきて、笠で顔を隠した男女の踊り手がいつの間にか現れ、しずしずと踊りながら通り過ぎていく・・・その後また違う坂道から別の一隊が幻のように現れて目の前を通り過ぎていく・・・あの背筋がゾッとするような・・・あるいは遠い夢の中に自分がいるような、遠い遠い過去の記憶の中にあったような・・・あのうつつともまぼろしともつかぬような・・・時間の中に入っていかねば・・・本当の良さは解らないと思う。

 昨日ビデオでデビット・リンチ監督作品「ロスと・ハイウェー」を見る。
 相変わらず内容がよく理解できないままであるが、それでも、あるいはそれなのに、十分楽しめた。 
 おかげで昨晩は夢の中でも、わからないストーリィを理解しようとして筋を追っていたりして・・・一日時間を経て、今頃になってようやく、なんとなく解かりかけてきた。 多分キーワードは作品の中のビデオだなぁと思う。 もう一度見れば大体のところが解りそうな感じがする。 明日、時間があればもう一度見てから、感想を書こうと思う。