日本の皇室問題

 以前皇太子の発言を受けて、彼が言った人格問題をそうじゃなくて実のところ人権問題だろうと日記に書いたが、その後のこの問題に対しての関係者の沈黙の中で考えたことを率直に述べてみよう。

 思えば婚約前当時の小和田雅子さんが、浩宮からの結婚の申し入れを何度も何度もかたくなに拒絶した後に、申しいれを受け入れた理由を上げて、当時外務省でやっていた国際関係の調整のような仕事を、皇室外交を通してもやることが出来ると説得されたことがきっかけになったと発言していたと思う。
 小和田雅子さんが結婚を受け入れる理由としてわざわざ発言したその中身について、彼女が込めた意味について、浩宮をはじめとする天皇家一家、宮内庁関係者、われわれ国民も含めて深く考えて受けとめることなく、これは御目出度いと折からの祝賀ムードに流されていって、すっかり忘れ果てていたと思う。 そこで先の追い詰められたような浩宮の記者会見で全員が、うん?何だ!という受けとめ方しかできなかった訳だ。
 彼女は普通の女性と違って単に皇太子に惚れて、あるいはシンデレラ物語のように皇太子妃になれることが嬉しくてあの結婚を受けたのではなく、自分の生涯を賭けるだけの価値があると信じていた仕事を、外務省ではなく皇室のなかに入ってやろうと決意して、それを自分に言い聞かせてようやく先の結婚を受け入れたのだった。 あたりまえのことだが、憧れの王子様と一緒になってプリンセスなることで舞い上がるようなミーちゃんハーちゃんとは訳が違うのである。

 しかし皇室外交の意味を、天皇一家や宮内庁内の官僚達も、われわれ国民も従来のスマイル外交の少々の手直しや、改革程度にしか考えていなかったのだと思う。 国民や内閣、宮内庁も、結婚したからには次の彼女の仕事は元気なお世継ぎを宿すこと、しかもそれは男の子が・・・などと外野から勝手なことだけを言い、皇室に入る時に彼女が決心をしたこころの誓いを、皆が皆忘れ果ててしまっていたのである。
 嫁入り前は何だかんだと言っていても、いったん嫁に入ったらその家の習慣に従うのが賢く従順な女性の美徳、さらにその従順さこそが日本の家庭の中に生きる女性の貞淑な美風、まして皇室とはその見本のようなところ、子宝にも恵まれてただただ一家揃って仲良きところを見せる永遠の日本の理想の家庭を演じることを国民こぞって願ったのだった。 雅子妃に劣らず優れた能力があったと思われる美智子妃殿下は、育った時代もあるが、古風なタイプの理想の女性像を受け入れるため努力する女性だったから、精神的な病を負いながら、一時は身も心もボロボロになりながら何とか天皇家の良きプリンセスを演じてきたのだと思える。

 そうみてくると、どうやらこの問題の小姑的な悪役はすべての日本国民ということになる。
 しかし、考えてみるにこの問題は戦後、家を受け継いだ日本の長男が嫁をもらった後、舅や姑がいる家庭ではことごとく起こっていた問題とほぼ同質の問題であるといえる。 意外とこの天皇家の問題の本質を国民は、誰に言われなくても裏では十分理解していると思う。
 たとえてみると世にでて働きたい嫁さんに、女は家庭を守って子育てさえしていればよいと頭から専業主婦を押し付けて根深い喧嘩になる、その辺の家庭の問題とまったく同質である。 戦後の家族改革が一番後回しになったのは、皆なが先刻承知の事ながら天皇家であり皇室だったのである。

 さてさて、雅子嫁の病気に対して最もよい処方や解決法があるとしたら、彼女が皇室に入ることを決意した時の、これを生涯の仕事とするという心の誓いを実現する環境を何が何でも一日も早く造ることだろう。 しかし問題がここまできたら、皇室外交を一切の口出しをしないで全面的に彼女達二人の考えに任せるぐらいの譲歩をしなくてはいけないと考える。 まあ、普通の家庭なら、嫁はんはとっくに夫を見限って家を出ているだろうぐらいの大問題だからなぁ、これは・・・。

 ようよう、浩宮よ、お前さんも男ならここで引き下がってはいけないよ。
 浩宮よ、お前さんこそ嫌がる彼女を無理無理天皇家に引き入れた張本人だし、惚れた大事な嫁さんを守るためここは、自分が天皇家から出るぐらいの覚悟で、あるいはそれをカタに天皇家=宮内庁=内閣を相手に現在の皇室外交のあり方を、自分達が(というより雅子妃が)考える外交に一切口出しをしないという約束、大幅な譲歩引き出すぐらいの大芝居を打つ覚悟がなければ、恋女房に逃げられるよ、逃げないまでもこの先、少なくとも嫁さんに同衾はしてもらえないだろうナァ。
 彼にそこまでの決意と力量があるかは少々気がかりではあるが・・・しかし、そこまでしなければ伝統とか、前例に甘んじている人々を動かし、悪しき伝統や慣習は壊せないものだと言いたいのだ。 
 これまでの伝統を守ることが存在意義であり、習慣の中でしかものを考えず、またものを言えないような宮内庁や内閣に、とにかく自分達が考え実行する外交に対して一切口を挟まないという言質を取ることなのだ。 その後は皇室外交を賢い嫁さんの考えに全面的に任せることだなぁ。 頭もよくキャアリアの経験もある嫁さんは全面的に任せても十分やれるはずだし、そこまでやれば、ほとんどの国民は二人の支持にまわると思うよ。 男はそこまでやってクルシュウナイ、ヨキニハカラエとでも言って、賢い嫁さんに全部任せておれば良いんだよ。 たぶん遅からずおざなりな皇室外交の大幅な改革が実現し、それに世界中が注目するところとなる日が来ると思うよ。

  皇室こそ変わらない伝統的な家庭? 来る嫁さん来る嫁さんがいつの間にか伝統の名の下でみな身も心もボロボロになってしまうような日本の伝統的な家族だよ、実際の皇室は。 こんなことを言い出せば自民党の伝統を重んじる重鎮連中は目の色を変えるかもしれないが、お前さんたち男が今も理想としている古い日本の家庭とは、現実的には女たちの涙と諦念の歴史で成り立つていたんだよ。  
 もうそろそろ象徴天皇制なんか止めてしまい、天皇家を理想の家庭を演じることから自由にしてあげることだよ。 そんなものを残しておいてもこの先ろくなことは起きないと思うぜ。 その権威を利用して国民を支配することを目論む権力者が出てくるだけだよ。 天皇家を良き見本として日本の家庭や伝統的な文化を復権しようと自民党をはじめとする与党の議員は考えているだろう。 その手始めが、教育基本法の見直しで、そこに日本の良き伝統家庭を明文化して盛り込んで法制化しようとしているのだろう。 また、一方東京都の教育現場では、都知事の意向を受けて、それを一歩すすめて日の丸、君が代に対する起立、斉唱を強制して、従わないなら処罰を行うような時代錯誤な悪政をすでに行っているんだよ。 日本国民全体が悪いにせよ、一番悪いのは本当は誰なんだよぉ。