帰る。

 昨夜神戸から帰ってきた。 神戸には彼女がいる。 神戸で毎月10日あまり過ごすのが恒例となって1年あまりすぎた。 彼女は神戸の須磨のマンション住まいで下の階には両親が住んでいる。 高齢の両親のうち父親が心臓にペースメーカ−を入れた身障者で、一昨年脳梗塞を患って以来バルーンといわれている尿袋を腰に下げて暮している。 また母親は数年前から糖尿病による軽いボケ症状がでてこちらも寝たり起きたりの生活である。 彼女は看護婦さんだったが、両親の看病のため三年前に仕事を退いて、毎日下の階の病人である両親の看護や日常生活の介護をしている。 そんな訳で彼女の方は神戸から動けない事情があり、もっぱらオフが月イチ訪ねている。 いずれは二人で一緒に暮すことも考えているが、当方にもまだ何とか一人で日常生活をしているとはいえ高齢の母親がいるし、当分はこのまま別々の暮らしが続くものと思っている。 不便なこともあるが、一人でいる時間と、二人で過ごす時間が交互にほどほどにあるというのは悪いものではないと思っている。
 神戸へ行った時は、二人で好きな映画を見に行くことが多い。 都会なので地方では見れないようなミニシアター系映画を見れるのがうれしい。 今回もミニシアター系の中でも極めつけのような「ヴァンダの部屋」というポルトガル映画も見ることが出来た。 その外、ロシアの映画「父、帰る」や、韓国のキム・キドク監督の「春夏秋冬そして春」、ビィスコンティ監督のなつかしい「山猫」なども見ることが出来た。 最近はどちらかが50歳以上なら夫婦で二千円で映画が見れるサービスもあり嬉しい。
 今年は暖冬の上、彼女の住いがマンションなので神戸にいるとき一度も暖房を使わずに過ごせた。
 十二月も半ばを過ぎて夜は暖房なし、日中はコートなしで外を歩けるというのも信じられない。
 最後の日、映画の後ビルの19階でランチを食べながら見下ろした神戸の町並みは、まるで春の光の中に輝いているように見えた。 しかし帰りついた昨夜の自宅は寒く、薪ストーブを焚き、床暖房をしてようやく一息つくことが出来た。 今日は預けてあった愛犬マロ君の引き取り、買い物、図書館、生協、受診などと忙しい一日を過ごし山の家へ帰った。そんな中嬉しいことがひとつあった。 病院で測ると体重が減っていたのだ。 ここ二十年間体重はたとえ1キロといえども減ることが一度もなかったが、二ヶ月前より2キロ減って86キロになっていた。 最近ご飯の量を意識的に減らしている結果が出てきた訳だ。前回担当の若い医者は毎日毎日体重計に乗って測ってみてください、と言っていたが、そんな楽しくないことはしたくないと思い、返事だけにしていたのだがこのような結果が出ると単純に嬉しいものだ。