不動産情報

 最近少しおかしくなっていた。 何がおかしいかといえば、PC漬けになっていたのである。

 まさに寝ても醒めてももの状態で、PCの前に座りっぱなしで検索を続けたりメモをしたりしていた。
 何にそんなに夢中になっていたかといえば、<古民家>の情報にである。
 きっかけになったのは昨年神戸で暇を持て余し、新聞の不動産チラシに目を留めたのが始まりだった。 動機はこの辺の土地や建物はいったいどれくらいの値がするのだろうかと思ったことだ。
 そのチラシの中に一戸建ての中古住宅としては破格に安い物件があった。 それは急激に郊外の都市化が進んだ中の農家で建物でそれには蔵や倉庫まで付いている。 そのチラシを出していた不動産業者がたまたま彼女が今住むマンション買うとき仲介した業者だったので、その時の担当の人に電話して詳しい内容の情報をファックスしてもらった。 安い事情がだいたい分った。 その場所は昔からの古い農家がかたまっている坂の一角で、その家に入るには道が昔のままで車が通れないほど狭い。 建物が古く土地だけの値段で、かえって建物があることが邪魔になっている。 取り壊すといっても重機が入らないほど道が狭いので取壊し料が高くつくなどなど・・・である。
 彼女を誘って住宅地図を見ながらその場所へ出かけたが、いがいと近く車で15分ほどで行けた。
 まわりからそっと見ただけだが、築数十年経っている建物は一般的な見方ではかなりのボロ屋に見えるが、そこは昔の農家の建物である、躯体はしっかりしているなぁと見える。
 山の家を四年がかりで再生した記憶がうずき始め、これを何とかしてみたいなぁと思い始める。
 しばらく迷っていたが、一月後ほどに不動産屋から問い合わせてもらったが、一度売りに出してみたが、もう少し住むことにした、という返事だった。 不動産屋からは似たような物権が有ればまた案内します、という返事で、数ヵ月後、車で30分ほど離れた三木市に近いところで農家が査定をしてもらっているという連絡が入り出かける。 まわりのロケーションは田園地帯で申し分ないが、外壁がモルタルで塗り固められていてこれをやりかえるにはかなりの手間だなぁ、と思っているうちに、結局この物件も売り手の事情でダメになった。 その後は不動産屋からはなかなか適当な出物がない、という返事である。 今月神戸へ行った時、彼女と車で舞鶴に住む弟の家へ出かけた。
 神戸と日本海側の舞鶴は今は舞鶴自動車というので結ばれていて、二時間弱で行ける距離なのである。  その高速道は丹波、篠山、福知山、綾部などの地方都市の近くを通る。 山すそに広がる田園になかにポツリポツリと藁葺屋根をアエン板で覆った古民家がと残っていているのが見える。
 縄文時代の竪穴住居に柱をつけて持ち上げたような三角屋根をみるうちに、眠りかけていた思いにまたあつく火が付いてしまった。 舞鶴から神戸へ帰り、さっそくPCで兵庫県京都府の古民家を検索しまくる。 古民家の売買情報があるのは、兵庫県の中東部では舞鶴道沿いの丹波笹山、その先の京都府の福知山綾部あたり。 中西部では中国道沿いの佐用郡から岡山県の美作あたりが主である。 いずれにせよ神戸からは高速を使っても1〜2時間かかる遠方である。 遠いなぁと思い、いったんあきらめたのだが、神戸から帰る前々日思い立って比較的お安い佐用郡の物件を見るだけでも見たくて当地の業者に連絡すると案内しましょうとの返事。 さっそく彼女と二人高速を飛ばして岡山県との県境の佐用ICまで出かけた。

 まず、上月町の値段がわからないという古民家を見せてもらう。 合併浄化槽や灯油ボイラー付であるが、家自体は手入れがよくなく、雨漏りなどしていないが人が住んでいないせいで少しずつ傷んできている。

 藁葺屋根の古民家は間取りはどこの家でもだいたい同じで、玄関が建物のユキ側にあり南向きが多く、入って横の部屋が田の字になっていて奥が桟敷、部屋の前に縁側があり、玄関を入った反対側は土間になっていて台所はその土間の奥にある。 トイレ、風呂は基本的に家の外にあったのだが、不便なので改造して母屋の中に作ったのもある。 たいてい母屋の横に別棟で倉庫がついていて、宅地としては100坪あまりで、少しましな家には土蔵などがついている。 

 続いて佐用町へ移動して、もう一軒見せてもらう。 川沿いに開けた小さな部落の最奥部の一軒で、前後に下屋の張り出しがなく、藁にトタン葺きの母屋の大屋根がそのまま軒になっている。 ごく普通のクラスの百姓屋だろうが、今の持ち主のまわりの畑の手入れもよくロケーションとしても部落のはずれでなんとなく心が動かされるものがある。 値段は500万を少し切るのだが、すでにひとりの買い手が値段の交渉に入っていて即断でないとそちらに行く、との返事だった。 これから他の業者の物件も見てみたいし即断はできないと答える。 近くにもう一軒古民家があったが、これは他の業者がお客に見せていたので通り過がりに見ただけであるが、これは前のものより値段はお高いが、なんとなくよくない気がした。 見学の初日は三軒を見で終わる。
 おい、おい、オフ君、そんなに家ばかり、いったいどうするつもりなんだよ・・・心の中では早まる自分にブレーキを掛けようとするのだが・・・思っているのは、古民家をもう一度自分の手で再生して、今度はそこに住むのではなくリフォームした状態で売りに出そう。 材料費だけを上乗せするのだから、比較的安く仕上がり即売れると思うのだが・・・その間の資金は自前で用意できるのだから・・・それに今回は材料費を全部書き出して集計してみる。 それに仕事の行程を、毎日の仕事内容を詳しく日記に書いて残す・・・


 神戸から帰ってからそんなことをこころで反復しながら、毎日毎日パソコンの前で古民家情報ばかり見ている日々である。
 この事についてはまた続いて書くつもり・・・