物件2と3

 昨日に引き続き・・・

 http://www.office-kimura.com/list/hyougoken/hyougoken-12.htm

 今回引っかかった三件のうちの1つの物件で、こ建物は多可郡加美町といって丹波市よりも少し西になる。 これを3としておこう。
 写真で見るかぎり建物の躯体は最初のものに比べてしっかりしているようだ。 しかしたんに藁屋根の上にトタンを被せたのが遅かっただけでそう見えるのかもしれない。  縁側の外のガラス戸は昨今のアルミ サッシ戸ではなく建具屋が造った木製のガラス戸のようなのがうれしい。
 部屋を撮った内部の写真の奥が真っ暗である。 田の字型の部屋の北側と西側が床の間、押入れ、戸棚などで完全にふさがれている。 暗いはずである。
 日本では一般に自然な風は南北に流れる。 とくに夏場はその南北の風がありがたいのである。 
 兼好法師も日本の住いは暑い夏のことむねにして造るべきだ、とわざわざ記している。
 これではこの建物はその南北の風が通り抜けないし、多分奥の部屋は昼間でも暗いと思われる。 
 日本の古民家は普段は田の字構造になってそれぞれ襖や戸で仕切られているが、夏場はその仕切りを全部外して、外からの風を過ごすことが出来るようなアジア式の構造なのである。
 これでは仕切りの襖を外しても部屋の中を風が通り抜けない。 まずこの建物を直すなら、北側の押入れや戸棚をなくし、壁を抜き、窓などの開口部を設けて、少なくとも北側を開放してやることだろう。


 それに古民家に住むといっても、われわれはその中で現代風の生活をするわけで、そうなると居間やダイニングキッチンがどうしても欲しくなる。 この建物でそれをするなら、奥の土間に床板を張ってダイニングキッチンにするのがよいと誰でもすぐ思いつくだろう。
 問題は居間で、本来なら座敷が居間の役をするのだが、座敷というのは畳に座って過ごすように出来ている。 床の間なども人が正座しての目線で、掛け軸や床の置物、いけばななどを見るのにちょうど良いような高さに造られている。 
 部屋に座卓などを置くにしても、われわれ現代人は正座や胡座をかいていては足が痛くなったり、疲れてきてゆっくりつろげない。 ソファなどがあればだらしなく腰掛けるのも良いし、その上で寝転がってもさほど行儀が悪いようには見えない。 座敷の畳の上に絨毯などをひいて応接セットなどを置いている家がある。 しかし畳の座敷にソファを置いても、床の間などを見下ろす感じになりどこかそぐわないものがある。 それに古い日本の家では鴨居と敷居の間が5尺八寸(175センチ)と決まっていた。 戦前までの野菜や魚中心の食事をしていた頃には日本人の背丈も伸びず、それくらいが程よい高さだったのだろう。 しかし、オフなどは背丈が178センチあり、立って歩くには5尺八寸は低く感じるし、ソファに座って5尺八寸の鴨居は目線に引っかかり、どこかうるさく感じるものである。
 (現在の山の家では、床の間を数十センチ上げてその下を戸袋にし、オフは床の間に掛ける掛け軸など持っていないから壁に額入りの絵を掲けている。 またその横の仏間の壁を抜いて床からの窓にして、部屋を明るくした)
 
 居間を床のある座敷とするか、それとも座敷は座敷のままにしておいて、他の場所(田の字型の土間に近い北側の部屋を土間奥のダイニングとつなげる)にとるかで民家の再生の仕方はかなり変わってくる。
 3に関しては土間に近い右奥のひと部屋も板の間にして仕切りをとり、ひとつながりの広いLDKにするのが無難だろうと思う。 その場合外部を見る位置は北向きとなるので、ダイニングにする東側に窓を大きくとって午前の光を室内にふんだんに入れる必要がある。 また北向きの外部には、建物から少し離して裏庭の植え込みなども必要だろう。

 http://www.office-kimura.com/list/sannan/sannan-19.htm
 
 これも最初の物件と同じで丹波市にあるのだが、これをかりに2としておく。
 これなどはダイニングが土間ではなく、すでに板張り(赤い部分)に改装されている。
 奥に飛び出た離れは寝間にするとして、問題は普段みんなが過ごす居間の場所である。
 この建物の場合南側の縁の外が庭になっていて、その景色を見ることのできる床の間のある奥座敷がこの家の一番の良い場所である。 思い切り田の字型の座敷の畳を全部板にして、建物を支える構造材ではない鴨居を外して、その上の下がり壁も取り払う。 真ん中の構造材の柱が一本残るが、四つの田の字の部屋全部を一つの広い居間にしてみたいなぁという思いがしてくる。 そこまでしなくても鴨居に代わる無目鴨居を高い位置に入れて、下がり壁を半分ぐらいにしてみるのも良いかなぁとも思ったりする。 いずれの場合も真ん中とまわりの四本の柱に鴨居を差してあった跡が残るが、それは致し方ないので埋木して体裁よく板を当てたりして隠したりする。 やや面倒な仕事になる。
 それを大工さんに頼むと相手がたたき上げの真面目な大工さんであればあるほど、そんな変な仕事をするのを嫌がると思う。  日本建築の常道を外れているからだ。 それに仕事に手間がかかり値段もかなりお高くなりそうだ。  しかし自前でやるぶんには材料費は意外と少なく、かなり安上がりになるだろうと思う。
 現在の山の家は場合は、鴨居は残したが回り縁の天井を取り払い、梁の上に板をひいて天井とした。 お陰で床から天井までの高さが12尺(3.6メートル)もある高い天井となった。