谷川俊太郎の詩「おしっこ」

 一昨日来た彼女とともに今日神戸へ向かう。
 神戸には糖尿病の進行とともにまだらボケ状態の母親と、三年前脳梗塞で倒れて腰におしっこのバルーンをぶら下げ、昨年心臓にペースメーカ入れた父親が待っている。 それの今年ようやく長い闘病生活を終了して退院してきた兄の三人が待っている。


  谷川俊太郎の新しい詩集『シャガールと木の葉』を読んだ。
  その中からアハハ・・・な詩 「おしっこ」 というのを一編以下に抜き出して書き写した。

 昔、谷川俊太郎の「死んだ兵士の残したものは」という詩に武満徹がメロディをつけ、小室等などが唄っていたが、この詩も誰かがメロディをつけて軽い調子で唄って欲しいなぁと思う。


   おしっこ


 大統領がおしっこしている
 おしっこしながら考えている
 戦争なんかしたくないんだ
 石油がたっぷりありさえすれば


 テロリストもおしっこしている
 おしっこしながら考えている
 自爆なんかしたくないんだ
 恋人残して死にたくないもの


 兵隊さんもおしっこしている
 おしっこしながら考えている
 殺すのっていやなもんだぜ
 殺されるのはもっといやだが


 男の子もおしっこしている
 おしっこしながら考えている
 ほんとの銃を撃ってみたいな
 ゲームボーイじゃまどろっこしいよ


 武器商人がおしっこしている
 おしっこしながら考えている
 銃がなければ平和は守れぬ
 金がなければ自由も買えぬ


 道で野良犬がおしっこしている
 おしっこしながら考えている
 敵もいなけりゃ味方もいない
 ただの命を生きているだけ