古民家ツアー2

 十日間家を留守にしている間畑の野菜、とくにキュウリとナスが大変なことになっていた。
 なんというか、まさに馬並みの大きさに成っていたわけだ。 とくに今年はナスを全部長ナスを植えたのでそれは申し分がない見事な長さと大きさに成ったわけである。 大きなナスはフライパンで焼き、太キュウリは種のところをスプーンなどでえぐって取り、キュウリ揉みにしてこれから毎日せっせと食べることになる。 オフは例年夏場になると夏バテなどと縁がなく太る傾向にあるのは、このキュウリ揉みの酢とナスをサラダオイルで焼いて食べるのが大好きだからかもしれない。
 トマトと朝鮮ナンバはまだ時期が早いので今回はほんの少しの収穫だった。
 また切り倒して果樹が少なくなった果樹園にプラムが実っていた。 今年はたくさん成っていないが、その分一粒の実が大きい。 プラムを鳥が来て啄ばむが、実が熟れているのですぐ落ちてしまう。 この時期の鳥たちは地上に落ちた実をあまり食べない。 そのようにして落ちたばかりのものを取って食べるのが酸味と甘みの程合いが良く、まさにドンピシャリの食べごろでじつに美味しい。 プラムの木の横には桃もたくさん成っている。 桃はもう少しした頃が食べごろであるが、袋掛けなどしていないので、まだ薄青い表面にあばたのような黒い斑点が少しある。

 さて古民家の方だが、車の故障で二日間お休みを取ったが、その後は動き出した。
 岡山から京都府に場所を替え綾部市大江町の物件を駆け足で五軒見てまわった。
 今回は舞鶴市に住む弟も同行した。 まず綾部市の北東方面の古い古民家二軒をまわったが、案内してくれた不動産屋が仲介物件だといってこの二軒は家の内部へ入って見れなかった。
 二軒とも県道からさらに小さな川沿いに山のいちばん奥に入った場所にあった。 まさに村はずれという感じでロケーションは悪くなかったが、家は外から見ただけでは印象が薄いものである。 数日前に見た物件なのだがもう記憶が薄ボンヤリしてしまってどんな家だったかはっきり思い出せない。
 その後に行った綾部市の西の民家は比較的新しく、おそらく戦前だろうが昭和期のものだろうと思う。 せっかくの白壁などに最近白いペンキを塗るなどの安易な細工がなされていて、かえって安っぽく見えてきわめて印象が悪い。
 その次の物件は不動産屋が強く勧めていた大江山の中腹にある家。
 不動産屋が手前で改造に掛かってその途中のものだが、 たしかに年代を経て黒光りした梁などは惚れ惚れとする。 しかしよく見ると床が微妙に傾いている上に、部屋の真ん中に仮柱を添えて屋根を支えている。 どうやら改造に掛かったが、石の上に土台を置いた家はあえて言えば波打つように微妙にあちこちに傾いていて改造を途中で断念したと思える。 これを直すには、一度家を曳き屋に持ち上げてもらいキチンと基礎をして、そこへ降ろすような根本的な改造しかないと思う。 今のようなその場凌ぎの改造ではかえってお金が掛かるだけで、結果的にも良いものにはならないだろう。
 不動産屋は、この家は勉強しますよ、と虫のいいことを言っていたが、その言葉がなおその家から気持ちを離れさしてしまう。
 そこで不動産屋と別れ、近くにある別件の格安の家を見にいく。 ナビする人がいないので入り道を何度か迷ったが、ようやく見つけた家は、なんと裏の山から水が出たのだろう家の奥が一部壊れていた。 それはそれで仕方ないのだが、そのことでその家に嫌気がさしたのか、あわてて夜逃げでもしたような家の荒れようであるのが何とも心寒くさせ、大江山にはその昔、酒天童子という鬼が住んだという話を思い出したりした。