日本の古民家の弱点は基礎

 昨夜は草刈の疲れで10時半ごろ眠ってしまった。 そのせいか今朝は6時前に目が覚めた。
 良いお天気であるが、朝晩さすがに涼しく、夜などは長袖を着ていてちょうど良い。
 今日も頑張って草刈を済ませてしまおう、と自宅へ行ったがなんとなくやりたくなくて薪を切った。
 薪小屋の前に7月ごろから置いてあった材木の束は8月の連日の雨ですっかり湿っている。 縄を切って束を解いて材木を広げて日の光りや風に当て、比較的乾いていそうなものから切り始める。
 今年の初めに材木を乗せて薪を切る台を前のものは古くなったので新しく作った。 その際に高さを少し高くした。それが正解で腰に掛かる負担が少しやわらいだ。 台所の調理台の高さはその人の身長÷2+5センチという計算式があるが、その計算でいくとオフの場合178÷2+5=94になってしまう。 既存の調理台の高さは少し前まで80センチが主流、最近になって85センチぐらいになってきたという。 日本女性の身長が平均150センチから160センチぐらいに上がってきたということだろう。
 さすがにオフの場合80センチの調理台は低く、長時間作業すると腰に来る。

 
 もうずいぶん前の話のようになってしまったが、今月10日に神戸から帰ってきてから、今回決めた綾部の睦合の家よりさらに奥に入った故屋岡の家も同時に求めてもよいと考えて、取次ぎの不動産屋へ連絡を入れた。 しかし、もうすでに遅く、他のお客さんが商談に入っているという返事だった。
 まあ、その返事を聞いて、半分残念であったが半分ホッともした。  しかし、値段も睦合の家の半分だったし、まわりに家が建て込んでなくて、よいロケーションだった。 もしリフォームして売ることを考えないで自分が住むのなら、かなり山奥に入って不便だが、こちらの故屋岡の家を選らんだろうと思う。 こちらが良いと思う物件は、他の人も良いと思うものである。 この故屋岡の家には縁がなかったと思うしかない。


 日本の古民家の最大の弱点は一様にその基礎にあると思う。
 セメントなどがなかった時代のことである、 土の上に石を置いてその石を基礎として上に土台を置いて、あるいはお寺や神社のように石の上に柄を立てて土台をし、その上に柱を建てた。
 これらの独立した石の基礎が長年の間に沈み込んだりして、微妙に横の水平が狂って来るのである。 そうすればまず床に高いところと低いところができて建物が歪んでしまうのだ。
 そこで低いところを持ち上げてみても、また今度は別のところが低くなったりして、水平方向の狂いは続くのである。 
 古民家の再生の第一歩は、お金がかかるが建物を全体をジャッキで持ち上げて、古い基礎石を外しセメントで布基礎を造り、そこへ土台を伏せた後、柱を下ろす。 あるいは家を持ち上げ、ベタ基礎をしてそこに柄を立てる、そのことから始めないといくら直しても、切りがないのである。
 部分的に手直しをしていても、結局は良いものにはならないし、最終的にはかえって高くつくという結果に終わるのがオチである。 古民家再生の実例集では一様にそのように家を持ち上げてから再生している。 オフの今住んでいる八尾の山の家も、曳き屋に頼んで建物を1メートルばかり持ち上げて、その下でセメントで布基礎をこしらえて、土台を伏せそこへ家を下ろしたのである。 その際、土台にホゾ穴を開けて、柱のホゾを入れたかったが、土台に差してあったホゾが長年の月日で腐っていたものも多くあり、仕方ないから一様に切り捨てた。 であるから土台と柱はホゾで差してない。 それでは地震が来た時家がズレル恐れがあるので、コーチスクリュウというものを柱の両側に取り付けて土台と繋いでいる。 そこまでやってしまえば、古民家は太い柱や梁を使ってがっちり組んだ建物が多いので、さらにかなりの年数は持つはずである。 今の山の家の大黒柱は欅柱で1尺(30センチ)以上、向かい大黒は9寸(27センチ)ある。 雪が多いところなので、これくらいあっても不思議ではない。
 これまで丹波や美作などで見てきた古民家のほとんどは床の水平に狂いが出ていて、床が不安定なものが多かった。 その中で綾部の睦合の家を選んだのは、八十年経っているというわりには床が比較的水平を保っていて、狂いが少なそうな物件だったからである。 これならば曳き屋に家を持ち上げて基礎をしなくても当分持ちそうであると思ったからである。