自分で家を建てれるか?

 ♪今日の仕事はつらかった〜
 自宅から山の家へ車を運転しながら、フォークソングが流行った頃の<山谷ブルース>の歌詞のさわりがつい口を付いて出る。 ♪あとは焼酎をあおるだけ〜 と続く。
 午前中草刈、午後から薪切りをしてすっかり疲れた。 普段なにをするわけでなく、本を読んで犬の散歩をするだけの生活を続けているので、たまに根を詰めて汗の出る仕事をすると疲れるだけでなく、腰をはじめ身体の節々が痛む。 でも草刈はこれでだいたい終り、あとは芝生を刈ればよいだけで、薪切りも明日もう一日やれば終わるだろう。

 当時は焼酎は貧乏人の酒と言われ、今のように普通の人で焼酎を飲む人はめったにいなかった。
 若者は何を飲んでいたかと言えば、さかんにテレビなどで宣伝されていたウイスキーであるが、(サントリーのレッドとか、ニッカのハイニッカ)これはウイスキーと言うより蒸留酒に色を付けただけのインチキ臭いウイスキーであった。 大人はだいたいカンをして温めた日本酒をを飲んでいたが、当時の日本酒は醸造アルコールを混ぜて造った、これも一応日本酒だが、あやしい日本酒であった。
 ビールはやたら口当たりの苦いキリンのラガーが主流で、市場の三分の二ぐらいがこれだったように覚えている。

 綾部の古民家だが、明後日契約してお金の受け渡しをする日である。
 今回は不動産屋の仲介はなく、地元の司法書士の立会いのもとで契約を交わし、登記することを持ち主と合意している。 いよいよ数日後から現場に入り、一人でコツコツ仕事を始めることになるのだが、契約の後神戸に寄ったりするので、本格的の始めるのは来月の5日ごろからになりそうだ。


 今回家を新たに建てるのではなく、改装、リフォームするわけだが、それでは素人が自分で家を建てれるのか?という問い掛けに対して、その気にさえなれば素人が家を建てるのはそんなに難しくはない、と答えることが出来ると思う。 もちろん一から十まで全部自分でをやるのは大変だし無理だと思うが、こだわりの人ならやってやれないことはないと思う。 しかし、何もかも自分でなどとこだわる根拠もないし、必要もないだろう。 家造りでまず一番大切なのはその家の設計図を書くことであると思う。  
 自分達がどんな家に住みたいか、それを家族で話し合い、それの下図を描くことである。 まず建てる土地にが決まっていればその土地の地形に合わせて大きさを決める。 この時点でその土地の建ぺい率とか容積率の問題がでてくるが、その点には後で触れることにして話を進める。

 どこに玄関を持ってきて、台所はどれくらいの広さにして、寝室は、子供部屋は・・・とひとつひとつ決めていけばよいだろう。 広さもだいたいの下図なら素人でも描ける。 そしてその下図を専門家に、大工さんとか設計士に見てもらって、専門化の目から意見を言ってもらい、不合理なところを直して本格的なものにすればよいのである。 設計図が出来れば家は半分で来たのと同じだ。 あとは実際の仕事に入って行くのだが、まずは基礎であるが、基礎などはその道の専門家にやってもらえばいいと思う。 家の基礎は今ではたいがい布基礎といって型枠を組んでコンクリートを流し込んで基礎とするのだが、素人の場合その型枠を作ることから始めねばならない。 その型枠はその後続いてまた家を建てるわけではないので、一度使ったきりで再び使わないので、結構無駄でもある。
 基礎が出来れば次は建物の躯体だが、これは大工さんに頼むのが良いと思う。 その大工さんも今は自分で柱や梁を自分達で鑿や鋸や鉋で切ったり削ったりしていない。 大体がプレカットといってコンピュータ付きの機械で、寸法に合わせて木を切ったりホゾ穴を開けたりしてもらっている。 この方が早くて幾分安いのだ。 今のプレカット機械は賢くて、寸法さえキチットした設計図があれば、その設計図を機械が読んで、必要に応じて自動的にカットしてくれるのである。
 プレカットされた梁や柱の構造材を今度は組み立てる棟上があるが、これも大工さんに頼むしかない。 これはどんな大工さんといえど一人では出来ない。 何人かの大工さんが集まってしかも今はレッカーを頼んできて柱や梁を組み立てていく。 その後は雨がかからないように屋根仕事になるが、これも素人がやってやれないことはないが、高いところでの仕事となるので危険だし、やはり大工さんを頼むのが良いだろう、その後の屋根の瓦とかトタン仕事も同じである。
 何時になったら出番になるかと言えば、この後からが素人大工の出番なのである。 土台、梁や柱構造仕事に屋根は終わっているので、これからは壁、床、天井、窓、出入り口などを造っていく造作仕事となる。 この仕事も難しければ最初大工さんに一部をやってもらい、それを見ながら同じように後を続ければよいのである。 具体的にいえば、壁下地をつくる仕事なら、壁下地の仕事を一部をやってもらい、それを見ていて真似ながら同じように残りの壁下地をしていけば良いのである。 床下地、天井下地などの仕事も同じようにすればよいのである。 床張りや外壁、内壁、天井なども一部をやってもらいそれを見よう見まねで繰り返せばよいのだ。 サッシを取り付ける窓枠なども、一箇所やってもらい、後はそれを見習って同じことをすればよいのである。

 ここまでの話でわかると思うが一番大切なのは、自分で家を建てることに理解してくれる専門家、つまり設計士とか、大工さんとか、工務店を見つけることなのである。
 
 そのような奇妙な仕事に理解ある大工さんを見つけるのが一番大事なことなのだ・・・日当を払うのに、そんなのは嫌だと、いやがられて見つからない場合もあるだろうが、捜せばいるものである。
 本来なら自分で本を買って、箇所箇所についてどんな仕事をするか書いてあるので、読んで勉強すれば、だいたいわかるものであるが・・・それでもどうしても分らなければ、大工さんに聞きに行くことだろう。

 大工仕事だけでなく、壁塗りやクロス貼りなども素人でも、その気さえあれば出来ないことはない。自分の家だし素人仕事だから、職人のように上手に出来ていなくて大体のことが出来ていれば良いではないか。 大体が最初は上手く出来なくてもあきらめないでやっていけば、終わる頃は結構出来るようになっているものである。 オフなどは昔小学校や中学の頃に机を並べていたあいつが、こいつが、今一人前の顔をして職人をやっているのだ・・・あいつにやれて俺には出来ないことはない、と思って自己流で何とかやってしまった。
 この事については、いずれまた・・・