町田康著 『浄土』

 台風の前のせいかすっきりしない天気。 どうやら台風は日本海に入らず本州を抜けていきそうだ。
 そうなると当地では北東の風が吹く。 しかし今回の11号は勢力は強いが渦巻きの範囲が狭いので、影響は少なそうだ。
 今年は雨が多いので草もよく伸びる。 山の家の周辺の草刈をした。 明日からは太陽が顔を出しそうなので、自宅の草も刈ってすべてをすっきりさせて綾部へ行こうと思う。

 兵庫県京都府の古民家情報を載せている業者のサイトを覗いて情報をチェックしている。
 昨日、神戸市北区に一軒の古民家の情報が出た。 300坪ほどの地面があって2000万円弱の売り出し価格である。 地面単価だけでいくと坪当たり7万円弱となる。 場所が神戸市、といっても六甲山の北側の旧山田町箕谷といわれている地区で、周辺は山また山で道が一本走っているその道沿いの家である。 近くには谷山団地などがあって、そこらは安くても坪20万円はする分譲地である。
 しかも敷地のうち50坪は神戸市に貸していてそこは駐在所として使われているし、約75坪ほどは北側を流れる川の法面で竹薮なので実質は使えるところは175坪ほどということになる。 それにしても坪当たり12万円弱とお安い物件である。 おそらくすぐ売れてしまうのだろうと思うが、今度神戸に行った時に売れ残っていればその古民家を見ておきたいと思っている。 値段からして建物はかなり痛んでいるだろうとは思うが・・・ その周辺は、箱木千年家といって日本に現存する民家としては最も古い平安時代初期の建物があったりする場所である。 

 http://kouhou.city.kobe.jp/kids/data/kb/kb06/kb06015.htm

 
 町田康著の『浄土』を読んだ。
 七編からなる短編集だが、全編、町田康節全開の作品集である。

 最初の一篇「犬死」のはじまりは以下である。
 ≫夏以来、ひどいことばかりがうち続く。例えば以前から知り合いで特にどうということもない関係だった男があたふたと忙しげに近寄ってきたかと思うと、到底承服できない条件で仕事を依頼、その場で承諾を迫り、断ると大きな声で「ああそうですか」というと挨拶もそこそこに立ち去った。暫くして会合に出席するとその男が居た。彼は人前で私を意味なく怒鳴りつけ、そして急ににやにや笑うと顔を五センチも近づけて、例の話しどうでしょう?と言った。私が返事しないでいると、男は不意に忙しげに立ち去った。いまではほうぼうで私のことを恩知らずだと言いふらして歩いているらしい≪
 
 とまあ、こんなふうに始まって、打ち続くひどいことをつぎからつぎと書き並べ、最後に
 
 ≫家の勝手口のドアーノブを大工が誤って(かわざとかわからない)内外を逆に取り付けたため鍵穴が室内にあるというおかしな状態になっていたのをいそがしさにかまけて放置しておいたところ盗人が入り、現金二十万円と時計宝石を盗まれたりとさんざんで、夏以降ずっと、これはいかなる禍事か、と嘆じていたのである≪

 いずれにしろ人は本音と虚飾の部分とのあいだをうろうろしているものである。 まちがって覆い隠している本音の部分がヒョイと顔を出したり、虚飾のためにさらに虚飾を重ねたりして辻褄をあわせているが、その化けの皮が間違ってずるりとはがれて、あわてふためいたりする。 抱腹絶倒する場面というのは、人それぞれに微妙に違うものなのだろうが、普段どんなシカメ面しい顔をした人でも、この作品集ではどこかで押さえが外れて、笑いが爆発するのではないかと思える。
 
 なおこの本の表紙の写真は本屋で立ち読みしてみる一見の価値がある。